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William Morrisは、19世紀イギリスの詩人でありデザイナーである。多方面で精力的に活動し、それぞれの分野で大きな業績を挙げた。「モダンデザインの父」と呼ばれる。
ヴィクトリア朝のイギリスでは、産業革命の成果により工場で大量生産された商品があふれるようになった。反面、かつての職人は、プロレタリアートになり、労働の喜びや手仕事の美しさも失われてしまった。そこでモリスは、モリス商会を設立し、インテリア製品や美しい書籍を作り出した。中でも植物の模様の壁紙やステンドグラスが有名である。生活と芸術を一致させようとするモリスのデザイン思想とその実践である※「アーツ・アンド・クラフツ運動」は各国に大きな影響を与え、20世紀のモダンデザインの源流にもなった。
プロレタリアートを解放し、生活を芸術化するために、根本的に社会を変えることが不可欠だと考えたモリスはマルクス主義を熱烈に信奉し、カール・マルクスの娘のエリノア・マルクスらと行動を共にした。
※「アーツ・アンド・クラフツ(Arts and Crafts Movement)」は、結局高価な製品を作ることになってしまい、裕福な階層にしか使えなかったという批判もあるが、生活と芸術を一致させようとしたモリスの思想は各国にも大きな刺激を与え、「アール・ヌーヴォー」「ウィーン分離派」「ユーゲント・シュティール」など各国の美術運動にその影響が見られる。日本の柳宗悦も、モリスの運動に共感を寄せ、1929年、かつてモリスが活動していたケルムスコットを訪れた。柳の民芸運動は日本独自のものではあるが、トルストイの近代芸術批判の影響から出発し、アーツ・アンド・クラフツの影響も見られる。