2010年11月19日金曜日

ギュスターヴ・モロー






「象徴派が求めたものは、目にみえない思想や魂を、絵にしていくことであった。」

 象徴主義は、フーズリーやフリードリッヒなどのロマン主義や、イギリスのラファエル前派の流れも含む。
 19世紀末は、絵画の世界以外でも、フロイトやユングが人間の心にメスを入れ始めていたし、思想界は、科学万能の意識に疑問を投げかけていた時期でもある。
 人間の精神的な、魂の部分をイメージにしていく、象徴主義が生まれてもおかしくない土壌はできていた。
 それは、まさに、クールベが見えるものしか描かない、と宣言し、モローが見えないものしか信じない、と言った、この対称が、端的に示している。

 前述のベックリン、クノップフ、ミレー(ラファエル前派)、そして今回のモローは、その中心的な存在であった。印象派の画家たちとほぼ同時代に活動したモローは、聖書やギリシャ神話をおもな題材とし、想像と幻想の世界をもっぱら描いた画家であった。彼の作品は19世紀末のいわゆる「世紀末」の画家や文学者に多大な影響を与え、象徴主義の先駆者とされている。
 また美術学校の教授となってから、自己の独創的美学を押し付けることなく、過去の巨匠に学び、個性を伸ばしていくよう指導した。のちにフォービズムを打ち立て、絵画の世界に革命を起こす、マティス、ルオー、マルケなどを育てることになる。

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