2010年11月25日木曜日

ポール・セリュジエ





 Paul Sérusierは、ナビ派の創始者のひとりであり、同派を代表する画家。鮮やかな原色を使用した色面のみによる平面的画面構成と、抽象性の高い単純化された形象表現で絵画を展開。「護符(タリスマン)」はナビ派の起源・象徴となる作品として、同派の作品の中でも最も重要視されている。また彼の作品には、宗教的かつ神秘的な側面が強く感じられることも大きな特徴のひとつである。彼は既存の絵画表現に限界を感じ、新たな絵画表現を求めて、フランス北西部ブルターニュ地方に赴く。同地で新たな絵画表現の指導者として若い画家らに名が知られていたポール・ゴーギャンとエミール・ベルナール、そして両者によって考案された「総合主義(サンテティスム)」に出会い、強く感銘を受ける。そして、ゴーギャンの指導を受けながら代表作『護符(タリスマン)』を制作。その革新的な表現は仲間たちから熱烈に歓迎された。その後、若き画家たちによる前衛的な芸術一派「ナビ派」を結成する。その後、ブルターニュの風景や様子を表現することを止め、宗教的・神秘的要素の強い作品表現へと傾倒してゆく。


護符(タリスマン、ポン・タヴェンの愛の森)について(写真2番目)


 「ポン・タヴェンの愛の森」の風景は、総合主義で用いられたクロワゾニスムでは存在している輪郭線すら無く、まさに色面のみによって画面が構成されており、その表現は、ほぼ完全に抽象化されている。ゴーギャンの指導によって、樹木は黄色、樹木に茂る葉は赤色、射し込む陽光によって落ちる陰影は青色で表現される本作の、それまでの絵画には無い全く新しい単純性と平面性、幾何学的にすら感じられる類稀な抽象性は、既存の絵画表現に限界と不満を感じた彼の、革新的表現であり、その既存の絵画概念に対する破壊的な革新性ゆえ、未完的かつ小作でありながらも本作は、他の派の画家たちから熱烈な支持を得ることになり、その後のナビ派の結成において道標的な役割を果たした。なお本作の名称は制作当初「ポン・タヴェンの愛の森」と付けられていたものの、ナビ派の画家たちが本作を同派の護符として扱った為、「護符(タリスマン)」と呼称されるようになった。

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