2010年11月23日火曜日

ジャポニズム








 ジャポニスムとは、ヨーロッパで見られた日本趣味・日本心酔のことである。ジャポニスムは単なる一時的な流行ではなく、当時の全ての先進国で30年以上も続いた運動であり、欧米ではルネサンスに匹敵する、西洋近代的な美意識と科学的パースペクティヴの、大きな変革運動の一つの段階として見られている。特に19世紀中頃の万国博覧会へ出品などをきっかけに、日本美術、つまり浮世絵、琳派、工芸品などが注目され、印象派やアール・ヌーヴォーの作家たちに影響を与えた。

 ジャポニスムは、画家を初めとして、作家・詩人たちにも大きな影響を与えた。たとえばゴッホによる歌川広重模写や、モネの着物を着た少女が非常に有名であり、ドガを初めとした画家の色彩感覚、人物や風景の構図にも影響を与えている。

 ジャポニスムはオリエンタリズムから生じた結果ではあるが、西洋近代を告げるルネサンスにおいては自然回帰運動が起き、芸術の世界では具象をありのままに捉えようとする近代的パースペクティヴが発展し、写実性を求める動きが次第に強まり、19世紀中頃にクールベらによって名実ともに写実主義が定着した。19世紀後半からは写実主義が衰え、印象主義を経て抽象主義などのモダニズムに至る変革が起きた。この変革の最初の段階で決定的に作用を及ぼしたのがジャポニスムであったと考えられている。ジャポニスムは単なる流行にとどまらず、それ以降1世紀近く続いた世界的な芸術運動の発端となったのである。

 昨今では日本の漫画・アニメーションなどがフランスなどで高い人気を博しており、「現代のジャポニスム」といわれている。なお、ルイ・ヴィトンのダミエキャンバスやモノグラム・キャンバスも当時のゴシック趣味、アール・ヌーヴォーの影響のほか、市松模様や家紋の影響もかかわっているとされる。

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